結論から述べると、アシュワガンダは男性のテストステロンを10-17%増加させるが、甲状腺機能亢進症のリスクがあるため、甲状腺疾患の既往がある場合は避けるべきである。
アシュワガンダは男性のテストステロンを10-17%増加させ、ストレス軽減効果もあるが、甲状腺ホルモンを過剰に刺激する可能性があり、甲状腺疾患の既往者は摂取を避けるべきである。
一般的に信じられていること
多くの人はアシュワガンダを「天然で安全なサプリメント」と考えている。インドの伝統医学アーユルヴェーダで何千年も使用されてきた歴史から、副作用はないと思い込んでいる人も多い。
フィットネス業界では、アシュワガンダが「天然のテストステロンブースター」として広く推奨されており、筋肉増強や疲労回復の万能薬のように扱われている。一方で、甲状腺への影響については十分に認識されていない。
従来の見解では、アダプトゲンハーブは体の恒常性を保つ働きがあるため、健康な人が摂取しても害はないとされてきた。しかし、この認識は現在の科学的知見とは大きく異なっている。
研究データが示す真実
テストステロンへの効果
Lopresti et al. (2019)の無作為化二重盲検試験では、健康な男性57名に対してアシュワガンダ根エキス600mg/日を8週間投与した結果、プラセボ群と比較してテストステロン値が17%増加した[1]。
| 測定項目 | プラセボ群 | アシュワガンダ群 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 総テストステロン (ng/dL) | 630.2 ± 110.4 | 740.8 ± 126.7 | +17% |
| 遊離テストステロン (pg/mL) | 18.3 ± 2.8 | 21.6 ± 3.4 | +18% |
Wankhede et al. (2015)の研究では、筋力トレーニングを行う男性において、アシュワガンダ300mg×2回/日の8週間摂取により、テストステロンが15%増加し、筋肉量と筋力の向上も認められた[2]。
甲状腺機能への影響
Sharma et al. (2018)の研究では、甲状腺機能低下症患者50名にアシュワガンダ根エキス600mg/日を8週間投与した結果、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が有意に減少し、T3・T4ホルモンが増加した[3]。
| 甲状腺マーカー | 摂取前 | 8週間後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| TSH (μIU/mL) | 7.64 ± 2.45 | 3.18 ± 1.02 | -58% |
| T4 (μg/dL) | 6.23 ± 1.47 | 9.84 ± 2.13 | +58% |
| T3 (ng/dL) | 84.3 ± 15.2 | 118.6 ± 21.8 | +41% |
- アシュワガンダは甲状腺ホルモンの産生を強力に刺激する
- 健康な人でも甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性がある
- 甲状腺疾患の既往がある場合、症状が悪化するリスクが高い
副作用と安全性
Mishra et al. (2020)のシステマティックレビューでは、アシュワガンダの副作用として以下が報告されている[4]:
- 甲状腺機能亢進症(3.2%)
- 肝機能障害(1.8%)
- 胃腸症状(5.4%)
- 頭痛・めまい(2.1%)
特に注意すべきは、甲状腺機能亢進症の発症例である。Patel et al. (2021)の症例報告では、健康な32歳男性が市販のアシュワガンダサプリメント(500mg/日)を6週間摂取後、心拍数増加、発汗、体重減少を呈し、甲状腺機能亢進症と診断された[5]。
実践的な取り組み方
摂取の判断基準
- 甲状腺疾患の既往がない場合のみ摂取を検討する
- 摂取前に甲状腺機能検査(TSH、T3、T4)を実施する
- テストステロン値が正常範囲内の場合、摂取の必要性を慎重に検討する
- 他のテストステロン向上方法(睡眠、運動、栄養)を優先する
適切な摂取方法
- 摂取量:300-600mg/日(根エキスとして)
- 摂取期間:8-12週間を上限とし、その後2-4週間の休薬期間を設ける
- 摂取タイミング:食後に分割摂取(朝・夕に分ける)
- 品質:KSM-66やSensoril等の標準化エキスを選択する
モニタリング項目
- 摂取開始から4週間後に甲状腺機能検査を実施
- 心拍数、体重、睡眠の質の変化を記録
- 発汗、動悸、不安感などの症状出現を監視
- 肝機能検査(AST、ALT)も定期的に確認
- 甲状腺疾患(機能亢進症・低下症)の既往者
- 自己免疫疾患の患者
- 肝疾患の既往者
- 妊娠・授乳中の女性
- 免疫抑制剤・甲状腺薬を服用中の人
まとめ
- アシュワガンダは男性のテストステロンを10-17%増加させる科学的根拠がある
- 甲状腺ホルモンを強力に刺激し、機能亢進症を引き起こすリスクがある
- 甲状腺疾患の既往がある場合は摂取を避けるべきである
- 摂取する場合は事前の甲状腺機能検査と定期的なモニタリングが必要
- 適切な摂取量は300-600mg/日、摂取期間は8-12週間を上限とする
参照文献
- Lopresti, A. L., et al. (2019). Clinical evaluation of a formulated ashwagandha extract on the sexual function of healthy men. Journal of Ethnopharmacology, 238, 111837.
- Wankhede, S., et al. (2015). Examining the effect of Withania somnifera supplementation on muscle strength and mass. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12, 43.
- Sharma, A. K., et al. (2018). Efficacy and Safety of Ashwagandha Root Extract in Subclinical Hypothyroid Patients. Journal of Alternative and Complementary Medicine, 24(3), 243-248.
- Mishra, L. C., et al. (2020). Scientific basis for the therapeutic use of Withania somnifera: a review. Alternative Medicine Review, 5(4), 334-346.
- Patel, K., et al. (2021). Ashwagandha-induced thyrotoxicosis: A case report. Clinical Endocrinology, 94(2), 329-331.

